「iPS細胞」というキーワードは、京都大学の山中伸弥のノーベル生理学・医学賞受賞(2012年)で多くの国民に知られるようになりました。培養した細胞の分化に成功すれば無限に作りだすことが可能だということで、「人工多能性幹細胞(じんこうたのうせいかんさいぼう)」と呼ばれています。再生医療につながる技術として、薄毛に悩む人たちはもちろん、薄毛治療を研究する機関や企業からも注目を集めています。
研究は始まったばかりで実用化はまだ先のようですが、iPS細胞を使った薄毛治療の可能性と、治療に立ちはだかる大きな壁について考えてみましょう。
目次
iPS細胞で薄毛治療が実現するとはどういうこと?
iPS細胞は英語で「induced pluripotent stem cell」と表記されることから、「iPS細胞」と呼ばれています。
人工的に作りだす細胞が、どのように再生治療に役立つのでしょうか。薄毛治療や育毛との関わりを中心に確認してみます。
iPS細胞ってなに?
皮膚など自分の体細胞にごくわずかの「因子」を導入して培養すると、人間の臓器や細胞に「分化する能力」と、「無限に増殖する能力」の二つの特徴を持つ細胞(多能性幹細胞)に変化させることができます。
この細胞が、iPS細胞です。2006年に山中教授らのグループが、マウスの皮膚細胞から初めて作ることに成功しました。「iPod」と同じように多くの人たちの手に届く技術として普及してほしいということから、最初のIを大文字にしないで、小文字「i」を採用したということです。
iPS細胞と薄毛治療の基本
iPs細胞による薄毛治療はこれからの研究テーマです。現段階(2017.6現在)で、ヒトiPS細胞単独による発毛実験が成功しているわけではありません。基本的なしくみを見ると、「iPS細胞」で髪の毛が成長する細胞を作りだし、薄毛やハゲた部分の頭皮に注入することによって、発毛可能な状態に再生するメカニズムが考えられています。ヒトiPS細胞とマウス細胞との組み合わせによって毛包を作ることは認められていますが、ヒトiPS細胞によって人間の髪の毛の「質」「太さ」が再現できるところまでは至っていないということです。
iPS細胞の歴史とiPS研究の今後の工程
マウス実験によるiPS細胞の作成から10年以上がたち、医療分野で治療に応用されるようになってきました。大学や企業によって薄毛治療の研究も始まっています。文部科学省が公表した「iPS細胞の工程表」を見ると、薄毛治療につながる再生細胞と組織「毛包」は、2019年から20年ころに臨床応用の開始が見込まれています。現場の取り組みを見ておきましょう。
すでに始まっている毛髪再生医療の取り組み
2016年6月、東京医科大学や東邦大学が化粧品メーカーの資生堂とともに「毛髪再生のための臨床研究を開始する」と発表しています。資生堂が公開している治療技術を見ると、患者自身の後頭部から「毛包」を含む頭皮を数ミリほどの大きさで採取、培養して薄毛部分に注入する方法です。AGA(男性型脱毛症)の治療には、遺伝の影響を抑える5αリダクターゼ阻害薬が処方されますが、女性は服用できません。
また、薄毛の根本的な治療方法はありません。自身の細胞を使う毛髪再生医療は副作用のリスクもなく、男性はもちろん女性の薄毛治療法としても期待されています。
iPS細胞による毛髪再生医療のメリットとデメリット
一方、iPS細胞を使った「毛包」の再生医療研究はこれから本格的に始まる見込みです。iPS細胞は、人間の臓器や細胞に「分化する能力」と「無限に増殖する能力」を持つ細胞です。ヒト細胞単独で分化に成功すれば、資生堂などが行っている再生医療技術も進化していることからAGA治療や女性の薄毛治療が加速する可能性があります。
期待が高まるiPS細胞による毛髪再生医療ですが、大きな問題点として「治療技術開発の時期が不明」「予測される高額な治療費」という問題点があります。文部科学省のiPS細胞の研究工程表でも研究開始時期なども確定しておらず、治療技術が確立される時期はわかりません。
また、治療技術が確立されても、AGA治療は保険適用外であり治療費が高額となるかもしれません。髪の毛を1本再生するのに100万円という見解も見られます。薄毛治療には最低でも1000本程度の植毛が必要です。遠い未来はわかりませんが、治療技術が確立されても、初期段階は治療のための費用が大きなネックになる可能性があります。
iPS細胞に頼らなくてもできる事はある
iPS細胞によるAGA治治療は、AGAの主な原因である「DHT(ジヒドロテストステロン)」の量の抑制ではなく、生えなくなった細胞を「髪の毛が育つ細胞」に変えることによって発毛作用が続く治療法です。同様の考え方に基づく治療法や育毛ケアはすでに行われています。
細胞再生治療はすでに行われている?
資生堂の毛髪再生医療やiPS細胞を使った治療は、細胞を培養して薄毛部分の頭皮に注入することで衰えた細胞をよみがえらせる治療法です。同じような効果を生み出すために、毛母細胞に成長因子や細胞増殖因子を届ける方法があります。わかりやすい例でいえば、ミノキシジルも血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の働きを高める効果の一つと言えます。
また、AGA専門の医療機関の中にはHARG療法という治療法を採用し、成長因子を注射などで注入する治療を行うようになっています。
毛髪再生医療と自毛植毛との違い
最後に、毛髪再生医療と自毛植毛との違いを知っておきましょう。資生堂の臨床試験で採取する毛根は、大きさにして数ミリ程度です。現在行われている自毛植毛は、移植部分に必要となる大きさだけ毛包を採取するため、後頭部に横15センチ程度の傷が残ることもあります。傷の大小からも、再生医療は患者にとって負担は大きく改善されます。育毛剤(医薬部外品)によるケアから、医薬品によるAGA治療、そして毛髪再生医療へとAGA治療の選択肢は拡大していますが、薄毛改善効果とともに体への負担も減る可能性が大きいと言えます。
おわりに
注入する成長因子が、ヒト細胞から培養された「iPS細胞」に変わることは薄毛治療に大きな革命をもたらすでしょう。文部科学省が「iPS細胞の工程表」に、他の病気治療とともに「毛包」を入れていることや、薄毛や育毛に悩む人が多いことから、今後、研究機関が増え研究が進むことは間違いないでしょう。それが「iPS」の「i」が小文字で表現された理念にもかなっています。
しかし、AGAケアにとって早く手を打つ予防法はありません。iPS細胞の研究は待たれますが、リスクが高ければ今すぐできる対策を採ることが重要です。
ハゲ薄毛研究所編集部
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